大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(ネ)1577号 判決

控訴人は、本件建物のうち左側の一戸建坪七坪五合(現在は増築により八坪二合五勺)は現在高崎勇吉の所有となつていると主張し、証拠を総合すると控訴人は、本件建物の所有権が前認定のように贈与により被控人に移転した後の昭和二十三年十月頃そのうちの前記一戸を右雨宮に譲渡することを約束して引き渡し、雨宮は昭和二十四年三月頃七合五勺の増築をしてこれを八坪二合五勺として、次で昭和二十七年三月十八日その所在地番を富士前町六番地として自己のために保存登記を受け、現在その登記上の所有名義人は高崎勇吉となつていることが認められるが、一方成立に争のない乙第十六号証によると、被控訴人は右保存登記に先き立ち昭和二十四年四月四日本件建物につき控訴人を債務者として処分禁止の仮処分決定をえ、本件建物については同月六日右仮処分裁判所である東京地方裁判所の嘱託によりその所在地番富士前町六番地二、建坪十二坪五合として控訴人名義の保存登記及び右仮処分決定の記入登記がなされたことが認められる。すなわち本件建物については先ず不動産仮処分決定執行のために保存登記がなされ、次でそのうちの向つて左側の一戸につき控訴人からこれを譲り受けた雨宮においてその保存登記を受け、この一戸については実質上二重に保存登記がなされたのであるが(本件建物の所在地番が富士前町六番地一であることは当事者間に争がないから、本文の各登記における地番は枝番の点で事実に相違していることになるが、このような登記の記載と事実の不一致は、これがために建物の同一性の認識が妨げられる特別の事情のない限り更正登記によつて是正しうるものであつて、登記の効力を害しないものと解するのが相当である。なお、仮処分決定執行のためになされた本件建物の保存登記におけるこれが建坪数の記載が当時既に行われていた七合五勺の増築をかん過してなされたものであり、従つて、その記載が七合五勺の限度で事実に符合しないものであることは先に認定したところによつて明瞭であるが、このような登記の記載と事実の不一致もまた更正登記によつて是正しうるものであつて、登記の効力には何らの影響も及ぼすものではないと解すべきである。)、不動産に関する仮処分決定執行のために裁判所の嘱託によつてなされた保存登記もこれが存続する限り所有者によつてなされた保存登記と同一の効力を有し、所有者といえども別個の保存登記を受けることは不動産登記法上許されないところである(同法第十五条、第四十九条第二号参照)から、前記雨宮の受けた保存登記及びこの登記を前提としてなされている同高崎勇吉名義の登記はすべて無効とするほかはない。そうすると、本件建物の所有権の移転については右雨宮及び高崎はいまだその登記を受けていないと同様の立場にあり、その所有権の取得を被控訴人に対抗することはできない関係にあるから、被控訴人において、前認定の贈与に基き控訴人に対し前記一戸を含む本件建物の所有権移転登記手続を請求することは少しも差支なく(雨官の増築部分は附合により本件建物所有権の目的となるから、被控訴人はこの部分を含む本件建物について本文の請求をすることができる。)、控訴人はこれに応ずべき義務を免れえないものといわなければならない。本件建物のうち向つて左側の一戸が高崎勇吉の所有となつていることを前提として、この一戸については、控訴人には被控訴人のために所有権移転登記手続をする義務はない旨の控訴人の主張もまた遂にこれを採用することができない

(牛山 田中 土井)

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